【滋賀の味覚】滋賀の食文化に染みる味ー鯉と鮒のこまぶし

鮒のこまぶし グルメ

滋賀の食文化に染みる味──鯉と鮒の「子まぶし(子造り)」

滋賀県を代表する郷土料理のひとつに、「子まぶし」や「子造り」と呼ばれる珍味があります。どちらも同じ料理を指す名前ですが、地元では「子まぶし」という呼び名の方が古くから使われており、料理そのものをよく表している言葉です。

この料理の最大の特徴は、酢で締めた鯉や鮒の刺身に、たっぷりの魚卵をまぶすという独特のスタイル。お祝いの席や、季節の節目に食べられてきた滋賀ならではのごちそうです。


「子まぶし」ってどんな料理?

子まぶしは、薄くそいだ鯉や鮒の身に、同じ魚の卵を贅沢にまぶして仕上げる一品。酢と少しの砂糖で締められた魚の身に、プチプチとした食感の卵が絡まり、噛むごとに旨味がじわっと広がります。

酢味噌で食べるのが一般的ですが、わさびしょうゆでも全然ありです。

子どもの頃はその見た目や少し骨が残るところが苦手でしたが、大人になるにつれて、あの絶妙な食感と魚の深い旨味のバランスがくせになってきました。地元の味って、時間とともに自然に好きになっていくものなんですね。

鮒のこまぶし

鯉と鮒、それぞれの魅力

■ 鯉の子まぶし

鯉はクセが少なく、身がしっかりしているので、酢味噌との相性も抜群。とくに寒い時期の鯉は脂がのっており、淡白ながらも味に深みがあります。

鯉

■ 鮒の子まぶし(子持ち鮒)

一方で、鮒は「冬から春にかけてが旬」。とくに子持ちの寒鮒(かんぶな)は珍重されており、卵の質感や量が料理の主役になるほど。滋賀ではこの季節に食卓にのぼることが多く、「旬の味」として親しまれてきました。

ヘラブナ

あら(骨・内臓)でつくる絶品みそ汁

子まぶしを作るときに出た鯉や鮒の「アラ」は、捨てずにぜひ味噌汁に。

これがまた絶品。魚の骨や皮からじっくり出る出汁に、赤味噌や白味噌を合わせると、深みのある滋味が広がる一杯に。生姜を少し入れると、魚の風味が一層引き立ち、体の芯まであたたまります。

私は鮒の味噌汁が旨味がたくさん出ていて大好物です。

子まぶしとセットでいただくと、滋賀の風土をそのまま味わっているような気持ちになります。

鯉こく

「子まぶし」と「子造り」、どっちが正しい?

実は、呼び方にはちょっとした違いがあります。

  • 「子まぶし」…地元で古くから使われてきた正式な呼び名
  • 「子造り」…正式にはフナの卵を塩水で茹でてほぐし、フナの刺身にまぶす工程を指すようですが、このように呼ぶ地元民もたくさんいます。

どちらも料理内容は同じですが、「子まぶし」という言葉には“地元の食文化”が色濃く滲んでいます。


最後に:滋賀の味は、季節とともに

鯉や鮒の「子まぶし」は、まさに季節を感じる料理です。
とくに寒い季節に食べる子持ちの鮒は、滋賀の冬を代表する味わい。
昔から続く調理法で、自然の恵みを余すことなくいただく──そんな滋賀の暮らしの知恵が詰まっています。

子どもの頃には気づかなかったこの料理の奥深さを、大人になって改めて感じるようになりました。
もし滋賀を訪れる機会があれば、ぜひ一度「子まぶし」の世界に触れてみてください。見た目はちょっと驚くかもしれませんが、噛めば噛むほど、きっとその魅力がわかるはずです。

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