【滋賀・ 信楽 .1】信楽焼にたぬき?──町の伝統から生まれた意外な主役

信楽たぬき 滋賀

信楽焼にたぬき?──町の伝統から生まれた意外な主役(その1)

滋賀県甲賀市 信楽 町。今や「たぬきの置物」で知られるこの町ですが、その始まりは、まったく別のところにありました。

信楽 は、滋賀県の南東部、三重県と奈良県の県境に近い山間の盆地に位置します。京都市からは車で約1時間、大阪市からも90分ほどとアクセスしやすく、自然に囲まれた静かな町です。

そんな信楽は、日本六古窯(越前・瀬戸・常滑・丹波・備前・信楽)のひとつに数えられる陶器の名産地。焼き物の歴史は平安時代に始まり、鎌倉・室町期には壺や甕(かめ)が作られ、江戸時代には茶道具、明治・大正時代には火鉢や水がめが主力となり、実用品として多くの家庭に浸透していました。

信楽焼の特徴は、鉄分を多く含む粘土と、焼成時の炎によって自然に生まれる「緋色(ひいろ)」の発色。

さらに、薪窯で焼かれることでできる「焦げ」や「灰かぶり」など、偶然の美しさを大切にする焼き物です。ざらりとした土の質感と、温かみのある素朴な風合いが魅力とされています。

こうした伝統の中から、昭和に入って生まれたのが「たぬきの置物」。信楽の陶芸家・藤原銕造氏が、遊び心でたぬきをモチーフにした陶器を作ったことが始まりです。大きなお腹に愛嬌ある表情、手に持つ通い帳──まるでどこかの店先で「いらっしゃい」と声をかけてきそうなたぬきたち。これが評判を呼び、徐々に信楽焼の新たな名物となっていきました。

高度経済成長期には観光地や商店街が活性化し、縁起物としてのたぬきがどんどん各地に広まります。今では信楽の代表的な焼き物として、海外からの観光客にも人気です。

なお、信楽焼にはたぬき以外にも、植木鉢や傘立て、食器や花器、近年ではモダンなデザインのインテリア陶器などもあり、現代の暮らしに寄り添った形で進化を続けています。

アクセス方法

  • 電車:JR草津線「貴生川駅」から信楽高原鐵道に乗り換え、「信楽駅」下車。駅からは徒歩圏内に多数の陶器店があります。
  • 車:新名神高速道路「信楽IC」から約10分。京都・大阪方面からも好アクセス。

周辺の立ち寄りスポット

  • 信楽陶苑たぬき村
  • 滋賀県立陶芸の森
  • MIHO MUSEUM(車で20分ほど)

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