琵琶湖の幻の魚──ビワマス
琵琶湖の幻の魚──ビワマス、ついに新種として認められる
琵琶湖にしか生息しない、幻の魚──ビワマス。
淡水魚でありながら、まるでサーモンのような美しい銀鱗。
その味わいの上品さから「淡水のトロ」とも称され、高級魚としても知られています。

そして今、このビワマスに大きなニュースが舞い込みました。
2025年6月、琵琶湖固有の新種としてビワマスに新たに「Oncorhynchus biwaensis(オンコリンカス・ビ ワエンシス)」という学名が付与されました(ビワマスが新種記載されました)。
ビワマスとは?
ビワマスは、琵琶湖にのみ生息するサケ科の魚。
これまでは、北海道などにいる「サクラマス(Oncorhynchus masou)」の亜種という扱いでしたが、
最新のDNA解析や形態比較の結果、サクラマスとは明確に異なる種であることが判明しました。
新種名は「オンコリンカス・ビ ワエンシス(Oncorhynchus ryukyuensis)」
研究者たちはこのビワマスを、「Oncorhynchus ryukyuensis(オンクリンサス・リュウキュエンシス)」という新しい学名で発表しました。
“ryukyuensis” は「琉球由来の」と訳されがちですが、ここでは日本列島南部に由来する魚種系統を表すために使われています。
ビワマスが生きる湖──琵琶湖の特別な環境
琵琶湖は、日本最大の湖であり、数百万年前から続く古代湖。
その独特な地形と環境が、ビワマスのような固有種を生み出してきました。

ビワマスは主に湖の深層に棲み、水温の低い場所を好みます。
春から夏にかけて、川に遡上して産卵するという、サケやマスに似た生態を持っています。
刺し身が絶品──ビワマスの味わい
ビワマスの魅力の一つは、なんといっても刺し身の美味しさにあります。
ねっとりとした食感に、上品でクセのない脂。
サーモンのような濃厚さとマス特有の淡白さがバランスよく共存し、「淡水魚のトロ」とも称されるほどの味わいです。
また、ビワマスはアニサキスなどの寄生虫がほとんど確認されておらず、鮮度の高いものは安心して生で食べることができます。
琵琶湖のどこで獲れるのか
ビワマスは琵琶湖北部を中心に生息し、10月下旬から11月下旬にかけて河川の上流で産卵します。
ふ化した稚魚は川でしばらく育ち、6〜7月ごろに湖へ下ります。
漁は主に春から夏にかけて刺し網などで行われ、年間漁獲量は20〜50トン程度に制限されています。

ビワマスの養殖と資源保護の取り組み
滋賀県では醒井養鱒場を中心に長年にわたりビワマスの養殖に取り組んでいます。
- 1976年:親魚の養成を開始
- 1979年:ふ化と飼育に成功
- 1993年:初の養殖魚誕生
- 2012年:全雌三倍体による商用出荷開始
また、漁獲制限、稚魚の放流、産卵期の禁漁など、持続可能な利用のための管理が進められています。
琵琶湖の宝を未来へ
ビワマスは、琵琶湖が数百万年かけて育んだ貴重な固有種です。
新種としての認定を機に、その価値と魅力がさらに注目されています。
この美しい魚を次の世代へと受け継ぐためにも、味わいながら、守る意識を育てていきたいものです。
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